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第11回「60歳のラブレター」 大賞受賞ラブレター

2011.07.01



みなさんは、
「60歳のラブレター」という企画をご存じでしょうか?


住友信託銀行が、2000年からはじめたもので、
夫婦間のラブレターを、はがき1枚に
つづってもらう応募企画です。


これまでに、9万通の応募が寄せられているようですよ。


その中でも優秀な作品は、
「60歳のラブレター」という書籍の中で紹介されていきます。


今年の大賞作品を紹介します。


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山尾 武次 (やまお たけじ) 様 [石川県 61歳]

体力作りの一環として、30年程前から二人で始めたジョギングが数年後には、ホノルルマラソンでデビューすることになったのです。そして、また何十年振りかで、二人の還暦と定年退職記念にと、今年1月9日鹿児島県指宿市で行われた第30回菜の花マラソン大会に出場を決めた。走る前、目標タイムを設定して20キロまでは一緒に走り、それ以降は各自のペースで走ろうと心に決めて走り出した。20キロ過ぎ妻が足が痛いのであんた先に行ってと言い出した。一人置いて行くのも心配はあったが、言葉に甘えて先を急いだ。しかし、自分も暫くすると足が動かなくなり超スローペースになってしまった。気持ちを入れ替えようとエイドステーションで口に水を含んでいると、妻が「よう」と言って元気に追いついて来た。それにはびっくり、そしてまた一緒に走り始めるが、妻は暫くするとまた足が痛いと言い出し、先に行ってと・・・・・心の中で今度はダメだなーと思いながら先を急いだ。また、エイドステーションで水を飲んでいると、「よう」と言って追いついて来る。そんなことを繰り返しているうちに40キロ地点が来た。残り2.195キロだ。そのとき「菜の花マラソン」のテーマ曲が聞こえてきた。最後の踏ん張りだ。ここで心を決めた。ゴールは手を繋いでゴールだ。最悪の記録にもかかわらず、拍手と歓声の中、ゴールへ疾走するうちに、何とも言えない幸福感で心が満たされていた。南国鹿児島といえども風は冷たい、しかし、握った手はいつまでも暖かかった。ゴール後、「ご苦労さん」と言葉をかけた。よく最後まで頑張った妻にねぎらいの言葉だ。ラブレターとは少々異なるかも知れないが、気持ちが一本の赤い糸のように繋がった還暦の言葉のラブ表示だった。